トイレットペーパーの芯がほどけるように…

「うひゃー!」
「あぅ、あひーーー!!」


暑い夏日。
先ほど知り合いが出ていったばかりの玄関先から奇声が上がる。
この知り合いはなんというか、寂しがり屋なのか、甘ったれなのか、神経質なのか、狼少年的なのか、時折オーバーアクションで過度なアピールをして人を困らせることがある。
またつまらない事で騒いでるようなら腕の一本でもへし折ってやろうかと見に行くと、


ポッキリと足が折れていた。


いやいや、遠目から見ると確かに足のくるぶしの上辺りが不自然に曲がってる気がするが、ズボンのデザインや背景による錯視かもしれない。
人間は無い物をあるかのように見たり、勝手に感じたりする性質を持ってるのだ。
そして無自覚に、あるいは意図的に、実際にはありもしない体験を都合良く生みだし、周囲にアピールをはじめる。


「ハフ、ハフッ、ふぎゅぁああああ!!」


両手で片足を抱えて唸ってる知り合いの足をいろんな角度から確認してみる。
からしたたる汗の量と眉間のシワの深さが尋常じゃない。
玄関先の段差で足を滑らせて転んだようだ。
救急車を呼ぶか聞いてみると、うなずく速度が通常の3倍以上速い。(当社比)


昨夜から寝てないから今から寝るよ、と伝えて別れたはずなのに寝る時間は消え、したたる汗を拭いて、冷たいオレンジジュースを飲ませて、救急車で付き添い。
脛骨の粉砕骨折で即入院だったので入院用の衣服も用意した。
う〜、眠い。
そのベッドで寝かせろ。


そんな日から2週間。
知り合い以上にオーバーなアピールをして看護師さんを困らせる患者のいる病室で、


「美味しいけど、味薄いね♪」


と、すっかり入院生活になじんだ知り合いが、渡したフリカケでご飯を食べている。
螺旋状に割れた脛骨の中心には髄内釘が入ってる。
はよ直せ。